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2025年05月28日

山椒の木

島の不思議な物語 外伝 「山椒の木」

共に市町村合併という過渡期を戦ったその人は、訪れた病室のベッドに正座をし直し、
言いました。「市長はこんなとこに居られず、申し訳ありませんが執務に励んで下さい」

ドクターからは、会うのも難しい状況ですと聞いていましたから、すぐ「横になって下さい」と言いましたが、私が去るまで姿勢を崩しませんでした。

多くの旧町の職員にとっては、合併は想定外の事でした。敢えて合併を選択しなくても、町民の為の行政サービスの維持のために、茨の道を選択し励んだのでした。

町民の為の施策は、なかなか理解されがたく、国、県と町民の間になって、それまでとは違った苦労を共に強いられました。

市政を維持することは、市民の為ですが、直接、関係の有ることは少なく、間接的な施策が市民に理解されるのには時間がかかります。逆恨みも有ります。

その人の自宅に、ある用務の依頼で訪れた事が有りました。結果としては、丁寧に辞退されてしまいましたが、その時、お守りとして、庭に有った山椒の木をいただきました。

二回目の選挙が近づいた頃、その木が枯れた状態になり、噂を聞いたその人から、「申し訳ありません」と連絡が有りましたが、なんと小さな葉が出て、復活しました。

枯れ枝のようになっていた山椒の木が、小さな緑の葉をつけ復活したのでした。
奇跡のような出来事でした。

その人の家族葬で、乞うて弔辞を読ませていただきました。
最後の言葉は、「去らば友よ」としました。友は信義と人情を重んじる侍でした。

多くの選挙を見守ってくれていた山椒の木は、六期目の前に枯れた状態になりました。
そして、復活はしませんでした。